VISION

リハビリやトレーニングの目的は、みなさんそれぞれが、自分のカラダについての仕組みを知り、必要な時に自分の身体の不調を理解、メンテナンスするための「神経科学の知識」「神経トレーニングの方法」を持っていただくことです。そのサポート役として、プライベート・セッションや、神経科学セミナーを通し、神経科学的な体の捉え方をお伝えします。

 

■神経トレーニングとは

 わたしたちが体を動かしたり、考えたり、感じたりするのは全て「脳」の働きによるものです。脳の実体は「無数の神経」のあつまり。体中に張り巡らされた神経回路に電気信号を行き交わせて、体の内外の情報を把握し、人の活動のすべてをコントロールしています。

 「神経トレーニング」は、ケガや病気、生活習慣、あるいは先天的な特徴など、なんらかの要因で機能不全に陥った神経に、さまざまな刺激を入力することで、脳そのものを含めた「神経の働き」を活性化し、不調や困難を改善する方法です。

 

■神経トレーニングが必要ない人はいない

 生まれてこのかた怪我も病気もしたことがない!なんて人がいないように、神経に一つの不調もない人なんていません。私たちが生活する中で抱える不調を神経システムの機能不全によってもたらされていると考え 「ストレスが原因」という漠然とした診断、これといった治療法の見つからない原因不明の不調などを神経システムの再教育を行うことで解決することができるかもしれません。

 


■個人の生きてきた歴史から導き出す「自分専用のトレーニング」

 神経トレーニングでは「腰の痛み=〇〇トレーニング」「肌のトラブル=〇〇改善」のように、症状への対症療法ではなく、起こっている現象(症状)の原因の究明です。

 「原因究明」でもっとも重要なのは、「個人の既往歴」。生まれてから現在に至るまでの、怪我・病気・手術・タトゥーなど、体が受けた影響を把握し、そこから機能不全を起こしている神経を探し出す事です。

 

■大掛かりな機材は必要なし

 神経システムの正常化を行うために最も重要な因子は訓練の頻度です。そのためにはスポーツジムにあるような大かりな機材は必要ありません。イス、紐、小さいボール、メガネ、スマートフォンのアプリなど、一般的に家にあるようなもの、可能な限り安価に手に入るものを使ってトレーニングを行います。

 


■神経科学的アプローチとは

理学療法士:喜代田薫

・なぜ、神経ネットワークなのか

動作、思考、感情、内臓の動き、全ては脳と体に張り巡らされた「神経の働き」によるものです。神経ネットワークは緻密繊細かつ壮大に設計され、たとえ怪我や病気などで神経回路に機能不全を起こしても、瞬時に代償回路によって活動を続けられるよう設計されています。しかし、代償神経回路を上回る機能不全の蓄積は「原因不明の痛み」「ストレスが原因といった漠然とした診断」「定期的にぶり返す症状」として表出されます。

 

・神経科学的レンズとアルゴリズム

神経科学というレンズを通して「既往歴」と「症状」を観察、評価することで、問題となる症状の原因となる神経アルゴリズムを見出せれば、その神経回路を選択的に再生、最適化するアプローチとなります。

しかし、瞬間的かつシームレスに情報処理する神経システムのアルゴリズムを理解するには、理論的なヒエラルキーが必要です。そこで、抹消から中枢までの神経経路を物理的及び機能的な8つの階層に分類し、それぞれの階層における機能評価を基に神経システムが必要としている刺激の種類、量、強度、頻度を見つける事ができれば、それは個別的な運動という名の処方箋となります。

 

神経トレーニング・ドリル処方の流れ

①既往歴と現在の主な症状から、機能不全が疑われる神経回路を推察します。

②推察した神経回路に、感覚や運動刺激を入力し、症状改善の有無を評価します。

③その評価をもとに注意深くドリルを適切に組み合わせて処方します。

 

神経トレーニング・ドリルには基本的に以下の2つで構成されます

Threat Reduction(神経システムにおける脅威レベルを減少させる)

実施直後に好反応がみられるドリル。神経回路に対して脅威レベルを低下させる作用があり、活動の前や最中に行います。

②Threat Inoculation Adaptation:(神経システムにおける脅威レベルに負荷をかけ適応させる)

実施直後に悪い反応がみられるドリル。代償回路が脆弱化しているため、好反応ドリルや正常な神経回路と組み合わせる事で神経回路を適応させてゆくドリル。1日の終わりや、これ以上活動しないタイミングに行います。